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2011.8.11[Thu] 早期発見で、命を救う「乳がん検診」
定期的に検診を受け早期に発見を
乳がん死亡を減らし、命を救う「乳がん検診」

札幌ことに乳腺クリニック(http://www.kotoni-breast.or.jp/)
浅石 和昭 理事長

  「ニュースで有名人が乳がんで亡くなったと流れると、その後2週間くらいは私のクリニックの乳がん検診受診希望者は通常の2倍程度になります。しかし、そ の期間を過ぎるとすぐに受診者数は通常通りです。この傾向は他の医療機関でも同じだと思います」と、札幌ことに乳腺クリニック(札幌市西区琴似2条2丁 目)の浅石和昭理事長は話す。何かで注目されると検診希望者は増えるが、早期発見・早期治療に一層の効果を上げるには「定期的に、継続して検診を受けるこ とが大事」と説明する。乳がん検診について聞いた。

Q 乳がんの患者さんは増加傾向と聞きました

 乳がんの新規罹患患者数は2009年で50,695人でした。日本人女性の16人に1人が、生涯で乳がんに罹患すると言われます。同年の死亡数は11,918人でした。
  乳がんは現在、女性で最も罹患数が多い癌ですが、死亡数は女性の癌の中で第5位です。また、5年生存率は80%を超えています。つまり、女性が罹る癌の中 では、罹患者は多い一方、治る率が非常に高いという実態が分かります。治る率が高くなった背景には乳がんを専門とする医師が増えてきたのと新薬の開発や薬 の使い方など、治療技術の向上があります。しかし、治る人の率をもっと上げるには早期発見が重要です。癌が進行してからだと治療費は膨らみ、助けられない こともあります。何も異変がなく、健康なうちから検診を受け始めることが大切です。
 検診は定期的に、例えば2年に1回受診と決めて受けることを 推奨しています。一度受けたから、もうしばらくの間は受けなくても大丈夫だとか、有名人がマスコミに自らの乳がん体験を語ったり、亡くなったりした報道が ある時だけ受診するというのでは不十分です。マスコミ報道をきっかにしても、せっかく受けた乳がん検診ですから、それを定期的に継続していくことを心がけ てください。
 日本人女性の乳がん罹患率のピークは40歳代後半から50歳代です。30歳代の女性なら2年に1回は乳がん検診を受けることをお勧めします。

Q 乳がん検診の受診率はどうなっていますか

  平成19年度地域保健・老人保健事業報告では、乳がん検診の受診率は全国で14.2%、北海道は18.3%、札幌市で17.9%でした。今は無料のクーポ ン券はじめ、さまざまな工夫や啓発活動が行われていますが、それでも受診率は20%を少し超える程度と推測されます。少し古いデータを見ても、アメリカは 約70%、ノルウェーやスウェーデンは約80%という受診率です。日本の受診率は非常に低い数字です。
 アメリカでも当然受診率が低い時期があり ましたが、90年代に健康政策として乳がん検診の受診率を上げる取り組みをしました。91年には65歳以上を対象として医療保険の項目にマンモグラフィ検 診を導入。マンモグラフィ検診についての知識を市民に広げる啓発活動や、医療保険に入れない低所得者層に対しては検診無料化も行いました。検診には一定の 基準を設け、国民が信頼して乳がん検診を受けられるようにした結果、飛躍的に受診率が向上したのです。

 イギリスやフィンランドでは、国が地方自治体に対して乳がん検診を実施すること、国民には乳がん検診を受けることを制度として定め、検診を義務化しています。こうした国では義務化とあわせて、検診費用は公費負担です。

Q 検診費用はどれくらい必要ですか

  検診は本人の意思で受けるため費用は全額自己負担となります。人間ドックをはじめ、MRIやPETなどの検査も本人が希望すると受けられ、料金はどのよう な検査を希望するかで変わります。参考までにマンモグラフィの検査料金は5,620円、超音波検査は3,500円、MRIで10,000円、PETだと 70,000円です。もし、乳房に違和感や痛み、あるいは何らかの不安な状況があれば診療の対象となり、医療保険で本人3割負担です。この場合は、初診料 にマンモグラフィ検査と超音波検査をあわせて3,550円となります。日本でもようやく無料のクーポン券で40歳から60歳までの5歳刻みの年齢で負担軽 減されるようになりましたが、まだ受診率はそう高くはありません。

Q どのような医療機関で検診を受けるべきですか

 ま ず、先に紹介した諸外国の乳がん検診に対する熱心な取り組みは、検診が早期発見に有効であり、その結果として乳がん死亡者数を減らし、確実に医療費を抑え る効果がある、という裏づけがあったためです。きちんとした診断ができる医師や医療機関があることが前提になります。闇雲に専門としていない医師や医療機 関を受診し、マンモグラフィという装置を使うだけの検査では死亡者数を減らしたり、医療費を抑える成果は見込めないと思います。もしも、きちんとした診断 ができず発見が遅れることがあれば、医療費は逆に大きくなります。

 例えばPETで1cm程度の早期乳がん検出率はマンモグラフィや超音 波検査には及びません。50歳未満の日本人女性の乳腺密度は欧米人に比較して高密度で、マンモグラフィの検診精度は欧米人より低くなることも指摘されてい ます。こうしたことを考えるとマンモグラフィで診てもらえばどこの医療機関でも安心ということにはならないでしょう。早期発見で早期に治療を受けるために は、検診は乳腺専門医がいて、乳腺疾患の専門外来がある医療機関を受診するのが良いでしょう。

Q 乳がん検診受診率を上げるための課題はなんですか

  受診率を上げるには、ひとつは無料クーポン券のような公費負担の枠を広げること。もうひとつはピンクリボン運動などの啓発活動で、市民、国民に乳がん検診 の大切さを普及する。そして、公費負担の拡大とともに国が何かのかたちで制度をつくり、定期的に受診できるようにすることが必要だと思います。
  いま国では税と社会保障の一体改革が叫ばれています。かつて導入に失敗した国民総背番号制のようなものです。これが実現すると、国民一人ひとりの状況を国 が把握できます。仮にこのシステムを利用できれば、国民の乳がん検診の受診状況も把握できます。何年も検診を受けていない人には、受診を促す通知を出すと いった方法が可能になります。
 将来、普及啓発により多くの女性が乳がん検診を受けるようになり、公費負担の拡大や制度として検診を受ける場合 も、その信頼を裏切らない検診精度と治療技術を医療側が保証できなくてはなりません。医療側の責任も重くなります。国が一定の基準や規定を設け、乳がん検 診を行う専門医や専門医療機関を指定していくことも必要になるでしょう。
 とりあえず今は、検診の有効性をよく理解していただき、皆さん自身で検診を心がけ、2年に1回は専門医療機関で検診を受けるようにしてください。

※記事中の各種状況は2011年時点のものです。新たな知見や技術、制度の改正等により、見解や手法、料金等の各種状況は変化する場合がありますのでご了承ください。

2012.1.31[Tue] 呼気で当日検査も可能、ピロリ菌
呼気で当日検査も可能、ピロリ菌
母子感染にも注意したい

今医院(http://www.kon-clinic.com/
今眞人院長

  胃潰瘍や胃がんの原因として知られるピロリ菌。もちろん胃潰瘍も胃がんもピロリ菌以外の原因で起きるわけだが、胃がんになった人を調べるとピロリ菌に感染 していた人が多いといわれる。ピロリ菌の検査と除菌について今医院(札幌市北区北25条西8丁目2-3)の今眞人院長に聞いた。

Q ピロリ菌とはどのような菌ですか。

A 1980年初頭に、オーストラリアの学者が発見し、2003年にノーベル賞をもらいました。ピロリ菌が棲んでいる胃は強い酸性の状態にあり、それまで は細菌はとても生きてはいられないと思われていました。ちなみに胃液の酸性度は1~1.4pH。あの酸っぱい梅干しの酸性度が3程度ですからそれ以上で す。何とピロリ菌はそんな過酷な環境のなかで胃酸を中和して生きていくことができる、ある意味たくましい細菌です。しかし胃の中で悪さをします。

Q 感染するとどのような症状が現れますか。

A ピロリ菌に感染すると、急性、慢性の胃炎がおこり、様々な障害が出てきます。
 ピロリ菌が作り出す障害物質だけではなく我々の体がピロリ菌に反応してつくりだす化学物質も影響するといわれています。粘膜の機能や、バリア、血流が障害されて胃の粘膜が傷害されやすくなってしまいます。
 すぐに症状はでてくるとは限りませんが、慢性的な胃炎や胃潰瘍を繰り返す人などは、感染している可能性があり注意が必要です。

Q 感染すると必ず胃潰瘍や胃がんになるのですか。

A  アメリカではピロリ菌に感染している人は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍に3~4倍なりやすいことが報告されています。また十二指腸潰瘍患者さんの 90~100%、胃潰瘍患者さんの70~80%がピロリ菌に感染していることがわかっています。日本では潰瘍の無い人でも50歳以上では60~80%がピ ロリ菌に感染していることがわかっています。胃癌、MALTリンパ腫の発生につながることも報告されています。

Q どのように感染するのですか。

A ピロリの感染率は高齢になるほど上昇します。性差はありません。感染経路については不完全な消毒の内視鏡による感染以外はいまだにはっきりしておりません。
 上下水道の整備状況とピロリ菌の陽性率には関係があります。したがって先進国では環境からの感染は少ないのです。我々が日常暮らしている環境中からはほとんど検出されませんので人間から人間への感染が主な感染経路とされています。
 感染時期は小児期が多く、家族内、特に(口移しでの食物摂取等)母子感染の頻度が高いといわれてます。

Q 感染を防ぐ方法はありますか。

A  現代の日本では家族内感染が主な原因です。おかあさん、おとうさんが検査を受けることが大切です。小さなお子さんがいる家庭や、これから出産を控えてい るご家庭でも大切な子供さんにピロリ菌をうつしては大変です。まずは検査を受けましょう。もし陽性なら、除菌しておくと感染頻度は下がるでしょう

Q どのような人は検査を受けるべきですか。

A 特には家族・パートナーに胃がん、ピロリ菌陽性者がいる場合。ご自身が胃潰瘍、十二指腸潰瘍を経験された人。慢性的に胃炎などで市販薬を服用している人。不衛生な環境を旅して生水を飲んだことがある人、小児期の衛生環境が悪かった人など。

Q 検査はどんな方法で行われますか。

A 内視鏡を必要とする検査と、必要としない検査があります。

1.内視鏡を必要としない検査
 (1)血液、尿検査(ヘリコバクターピロリ抗体測定)
 (2)呼気検査(お薬を飲んだ後に呼気を調べる尿素呼気試験)
 (3)便中抗原測定
2.内視鏡検査
 (4)検査時に採取した胃粘膜で調べます(培養、鏡検、迅速ウレアーゼ)

 いずれも一つで完全ということはありません。組み合わせて用いる場合もあります。
 当院では(2)呼気試験の場合、絶食で来て頂ければ全部で30分ほどで結果が出ます。このように当日すぐに検査結果がわかる検査もありますのでかかりつけ医療機関に問い合わせしてみましょう。

Q 検査費用はいくらですか。

A 検査の費用は健康保険適応(3割自己負担)で初診、再診によって異なりますがそれぞれ
 (1)1000円から2000円程度
 (2)2000円から3000円程度
 (3)1000円から2000円程度
 (4)6000円から10000円強の費用が必要となります。
 いろいろなケースが考えられますのであくまで目安とお考え下さい。
 一概には言えませんが、内視鏡検査や、組織生検、その他診断率を上げるために組み合わせて検査などをすれば追加で費用が発生します。
 一般的には胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断がついていなければ保険適応にはなりません。現状ではピロリ菌感染の疑いだけでは健康保険診療が出来ないことになっています。
 診断がついておらず、腹痛その他腹部症状で受診した場合は、まず消化器系の検査をしなければなりません。そこで潰瘍、もしくは潰瘍の瘢痕が認められた後のピロリ菌検査になりますのでその分の時間と費用は必要になるということですのでご注意ください。
 健常者が検査を受ける場合の料金は健康診断となりますので各医療機関にお問い合わせください。

Q 検査はどのような医療機関で、何科を受診すべきですか。

A 消化器内科、一般内科を受診してください。

Q ピロリ菌が見つかった場合はどうしたらよいですか。

A お薬で除菌ができます。
 一次除菌、もしこれで消えなかった場合は二次除菌まで可能です。
  酸を抑えるお薬と、抗菌薬2種類を1週間飲みます。除菌率は80%以上です。味覚障害、便通以上等の軽度の副作用がありますが過度の心配はありません。可 能な限り1週間飲み続けてください。期間が短縮すると除菌率が下がります。また活動性潰瘍があった場合は、潰瘍治療をしてから除菌という場合もありますの で担当医と相談してください

Q 除菌のための費用を教えてください。

A お薬のみの費用は健康保険適応(3割自己負担)で約1500円から2000円程度です。用いるお薬によって違いが出てきます。また調剤料、薬剤情報提供料等が加算されます。期間は一時除菌で成功すれば1週間の内服で終了です。
 除菌判定は通常お薬を飲み終わってから1ヶ月以降に行います。残念ながらピロリ菌が消えてなければ二次除菌は抗菌薬の種類を変えて、さらに1週間内服します。入院はもちろん必要ありません。

Q 検診で慢性胃炎といわれましたが、ピロリ菌検査や治療に保険はききますか。

A 前述しましたが、現在医師による胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断もしくはその既往(その他早期胃癌内視鏡手術後、ITP、MALTリンパ腫等々)がないと健康保険をつかって上記検査を受けることができません。
  したがって胃炎だけではピロリ菌の診断治療に保険はききません。潰瘍は無いんだけれど、心配で自費の検査を受けた結果が陽性であったならば、除菌まで全額 自費で行うことになります。すると、検査、診断、お薬すべてが自費となってしまいますのでかなり高額な治療になってしまいます。
 もし健康診断等で胃の検査を行った場合、潰瘍になった痕がないかどうか念のために必ず聞いておいたほうがいいでしょう。潰瘍の既往があることが証明できればそれで保険が適応です。

Q 除菌しましたが、これで将来も胃がんの心配はありませんか。

A 除菌に成功したならば、胃癌のリスクは減ると思います。それも出来るだけ若いうちに検査をし、処置をしたほうが良いでしょう。しかし癌の発生は現状誰にも予測はできません。ピロリ菌を除菌したから今後絶対胃癌にならないとは残念ながら言えません。
 内視鏡などの定期検査は定期的に受けることが望ましいでしょう。

※記事中の各種状況は2012年時点のものです。新たな知見や技術、制度の改正等により、見解や手法、料金等の各種状況は変化する場合がありますのでご了承ください。

2011.12.20[Tue] 若い女性も注意したい関節リウマチ
若い女性も注意したい関節リウマチ

北海道内科リウマチ科病院(http://www.ra-hp.jp/
谷村一秀理事長・院長

  日本人の約80万人が関節リウマチといわれ、特に女性に多い病気で知られる。指などの関節に変形を起こしている高齢患者さんを目にすることが多いため、高 齢者の病気と思われがち。しかし30歳代から発症するケースが多くなるため、若い女性も関節リウマチを意識し、体の異変に注意したい。よりよい日常生活を 続けるには、発症した早期に治療を開始することが重要という。
 北海道内科リウマチ科病院(札幌市西区琴似1条3丁目1-45)の谷村一秀理事長・院長に話を聞いた。

Q 関節リウマチとはどんな病気ですか

A 炎症が関節に起こり、骨や軟骨が徐々に壊される病気です。
 全身のさまざまな関節が痛んだり、腫れたりします。原因は不明ですが、免疫の異常により関節に炎症が起こります。
 このため関節が腫れたり、強く痛んだりして、そのまま放置すると骨や軟骨が破壊され、関節に変形が起きることで日常生活にも支障が出てきます。

Q 患者さんは多いのですか

A  国内には80万人以上の患者さんがいるといわれています。その内の約8割は女性で、30歳~50歳代にかけてが発症のピークです。一般の方にはなんとな く高齢者の病気と思われがちですが、これは中年以降で発症した方の炎症が進み、関節の変形が起きてしまっている患者さんを目にすることが多いためだと思い ます。
 現在では生物学的製剤という良いお薬ができたこともあり、昔に比べると治療に光明も差してきています。

Q 治療はどのように行われていますか

A 治療は薬物療法、基礎的治療(患者指導)、リハビリテーション、手術療法に大きく分けられます。  
 薬剤による治療は、非ステロイド抗炎症薬、抗リウマチ薬、ステロイド薬、生物学的製剤があり、作用や使い道も違いますから、専門医による治療が大切です。
 また、患者さんは医師の指示を守って正しく使用することが重要になります。薬物療法とともに大切なのがリハビリテーションと基礎的治療です。関節に負担をかけず、少しでも楽に暮らすためには、日常生活の工夫と自主訓練が必要です。
 当院ではリハビリとともに、できるだけ普通の日常生活を続けられるよう生活指導、栄養指導、運動療法などの専門職が患者さんに直接指導する体制をつくっています。
 特に内科と整形外科、リハビリテーション科などが連携して総合的な診療をする必要があるため、当院では治療が特定の専門領域だけに限定されないよう、チーム医療を基本とした病院として機能させています。

Q 30歳代の女性に発症した場合、妊娠・出産はできますか

A 患者さん中には今後結婚を控えている人もいます。30歳前後の女性患者さんで妊娠・出産を考えている主婦の方もいます。
 治療で免疫抑制剤や抗リウマチ薬を服用している人が妊娠・出産をする場合は、医師に現在の病気の状態を判断してもらい、薬を調整して計画的に進めていくことが必要です。そのためにも、病状を安定させて行くことが大切になります。
 特に免疫抑制剤は催奇形性などがあるため、患者さんの病状が安定していて、医師の指導を受け、計画的に進めていくことで妊娠・出産は可能といえます。

Q 早期発見のためのサインを教えてください

A 従来、次の7つの項目のうち、次の4つ以上該当すると関節リウマチと診断されました。
「▽ 朝のこわばりが1時間以上続く ▽3ヶ所以上の関節の腫れがある ▽手首、指の第2関節、第3関節の何れかに腫れがある ▽腫れが左右対称に現れる ▽リ ウマトイド結節(肘・膝・指関節などにできる瘤のようなもの)がある ▽血液検査でリウマトイド因子が陽性▽エックス線検査での診断」です。
 し かしこの診断法では治療の開始が遅れることがあるため、早期に発見、診断することを目的として、2009年に新たな関節リウマチ新分類基準が提唱されまし た。この分類方法では関節の腫れや痛み、また血液所見(リウマチ反応や炎症反応)などを点数化し、一定以上の点数をもとに診断するものです。この新たな基 準によって診断精度も向上することができました。

 関節リウマチは、発症後早期に、急速に進行していくことが分かっています。できる限り身体機能を保つためには、さまざまな機能障害が起きる前に、できるだけ早く治療を始めることが大事です。

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2012.7.19[Thu] 女性と高齢者に多い尿路感染症
女性と高齢者に多い尿路感染症

中田泌尿器科病院(http://www.nakata-uro.com/
中田康信院長

尿道から腎臓にかけての尿路に起こる感染症が尿路感染症。特に高齢者の場合は低栄養状態や糖尿病が合併すると重症化や慢性化しやすいため注意したい。尿路感染症について中田泌尿器科病院(札幌市西区西町北5丁目1-5)の中田康信院長に聞いた。

Q 女性に多い代表的な尿路感染症は何ですか
A  膀胱炎と急性腎盂腎炎が挙げられます。膀胱炎は一般に性的活動期にある女性にみられ、若い頃に経験している人も多いのではないでしょうか。尿路感染症を 引き起こす原因はほとんどが細菌です。大腸菌やブドウ球菌、腸球菌などが尿道から膀胱に侵入して炎症を起こします。カビや酵母といった真菌やウイルス、寄 生虫などで起こることもあります。
 女性に多い理由は尿道が男性に比べ短いこと、細菌のいる腟や肛門と尿道口との距離が近いことがあげられます。どうしても細菌が侵入しやすくなってしまいます。
 しかも性交によりこれら細菌が侵入する機会は増えますから、必然的に性的活動期にある女性に多くみられます。外陰部を清潔に保つこと、性交のパートナーも衛生面に気をつけること、性交後は排尿を心掛けることなどが予防に役立ちます。

Q 膀胱炎の症状と治療について教えてください
A 症状は排尿痛、頻尿、残尿感、尿の混濁が主です。突然強い尿意に襲われ、尿失禁を起こすこともあります。
 急性で他に基礎疾患がない単純性膀胱炎の場合は、十分に水分を摂取して尿量を増やし、抗生剤を服用することで比較的容易に治療できます。慢性のものや他に基礎疾患がある複雑性膀胱炎の場合は、それぞれ異なってきます。
 膀胱炎に限らず、尿路感染症は完全に治っていない場合でも自覚症状が消えることがあります。自己判断で治ったと思い、治療を中断すると症状をぶり返したり、悪化させることもありますから医師の指示に従って治療を受けることが重要です。

Q 急性腎盂腎炎とはどのようなものですか
A 腎盂腎炎は主に尿道から逆行してきた細菌が腎臓で炎症を起こすものです。片側の腎臓に起きる場合もあれば、両側に起きることもあります。
 構造上の異常、尿路結石、神経因性膀胱、前立腺肥大などが尿の流れを妨げたり、尿が膀胱から尿管へと逆流することで発症リスクは高くなります。また妊娠中は子宮が尿管を圧迫するため、尿の流れを妨げることがあります。
 膀胱炎の症状や発熱、悪寒、感染を起こした腎臓側の腰の痛みなどが急に起きてくるのが急性腎盂腎炎です。
 急性腎盂腎炎の場合は抗生物質の点滴、抗生剤・抗菌剤の服用などで治療します。

Q 高齢者の場合はどのような尿路感染症が多いですか
A 高齢者の場合は何らかの基礎疾患と関係した難治性の複雑性膀胱炎と慢性化した腎盂腎炎が多くみられます。
 高齢になってくると糖尿病の人が増えてきます。また前立腺肥大、尿路結石、膀胱がん、腎盂尿管がん、神経因性膀胱などの疾患や免疫力の低下がみられるようになってきます。
 神経因性膀胱とは脳血管障害や脊髄損傷、椎間板ヘルニア、糖尿病が原因疾患となって脊髄排尿中枢(神経)が損傷され、膀胱と尿道が正常に機能しなくなるものをいいます。排尿がうまく行われないため、感染・発症のリスクは高まります。
 また、糖尿病でも末梢神経障害が起きたり、免疫力の低下で感染症に罹りやすくなります。糖尿病の場合は重症化しやすいことから、感染症を引き起こさないよう生活上の注意が必要です。
 こうした基礎疾患がある場合は、基礎疾患と並行しての治療が必要になるため、再発や再燃もしやすく、治り難いものとなります。

Q 高齢者が気をつけることは何ですか
A 例えば寝たきりでいると尿が停滞し感染症を起こしやすく、尿路結石もできやすくなります。結石の表面には菌がつきやすく、重症化させます。上体を起こしたり、体位交換で尿の流れをよくすることが求められます。
 高齢者の場合は、腎機能の低下や免疫力の低下、低栄養などもあり、感染すると重症化するリスクが高まります。
  若い人に比べ高齢者の発熱は体力の消耗が激しく、脱水にも気をつけなくてはなりません。脱水は体力を低下させるとともに尿量を減らしてしまいます。介護を 受けている高齢者では、介助者の手を煩わせないよう水分を控え、尿の回数を減らしている人もいますが、水分をしっかり摂り、きちんと排尿させることが大切 です。
 特に基礎疾患がない高齢者の場合も、低栄養になると免疫力は低下してしまうのでバランスのよい食生活を心掛けてください。

※記事中の各種状況は2012年時点のものです。各種状況は変化する場合がありますのでご了承ください。

2012.8.10[Fri] 生活の質を上げる人工関節
山の手通八木病院(http://www.yamanotedori.net/index.html
八木知徳院長

  病気やケガで関節が破壊され場合の治療法として知られるのが人工関節置換術。女性や高齢者に多い関節リウマチの辛い痛みをとり、日常生活を取り戻す治療と して一般にも知られるが、耐用年数の面から適応は比較的高齢者に限られてきた。しかし、最近では人工関節の耐用年数が延び、再手術で使用年数をさらに延ば すことができるため、中高年で治療を受ける人も目立つようになってきているという。歩行の障害を改善し、激しい痛みの解消で、生活の質を上げることができ る人工関節置換術について山の手通八木病院(札幌市西区西野3条5丁目1-35)の八木知徳院長に聞いた。

Q 人工関節の治療が必要になる病気は何ですか

A 一般的な病気では変形性膝関節症と関節リウマチが挙げられます。このほか、外傷や腫瘍などで人工関節置換術が必要となるケースもあります。
膝 関節は自身の体重を支えながら長年歩行などの動作を行っています。そうすると軟骨も徐々に磨り減り、滑らかな動きができなくなり、炎症を起こして痛みが生 じるようになってきます。こうした仕組みから、変形性膝関節症は比較的高齢者に多い病気です。また、膝関節に負担をかける過度の運動・動作の長年の繰り返 しや過度の肥満でも発症のリスクは高まってくるといわれます。
 関節リウマチは全身の関節に炎症を起こす病気です。この炎症が進むと関節の軟骨やその下にある骨が破壊され、脱臼や変形が起きてきます。激しい痛みを伴っていることも多いようです。
 薬物療法や理学療法などで痛みを和らげる保存的な治療を行いますが、病状が進行して、関節が変形し歩くことに障害が生じたり、痛みが激しいなど、生活上で困難をかかえるような場合は人工関節による治療が必要になります。
 人工関節置換術は、こうした病気によって痛んだ関節を人工関節に置き換える治療です。

Q 人工関節にすると痛みはなくなり、歩けるようになりますか

A 人工関節に置換することで、炎症性の激しい痛みはなくなります。手術後の適切なリハビリにより、歩くことはもちろん、軽いスポーツを楽しむこともできるように回復します。
  特に膝関節の場合は自然な動きを大切にするため、よく曲がるタイプの人工関節を選択していますが、その人に必要な生活動作や関節の破壊の程度により、関節 可動域が狭いタイプの人工関節が選択されるケースもあります。そこで、手術を受ける前には医師ときちんと話し合い、どのような生活環境で、どのような仕 事・スポーツなどを望んでいるのかなど、現在の生活背景を踏まえた手術後の生活復帰について相互理解が必要です。
 私の場合は、何れの患者さんに もモバイル型という関節可動域が広く、自然な動作ができるタイプの人工関節を最優先してお勧めしています。よく曲がる人工関節であれば、日本人の文化とし て必要な正座ができる場合があったり、長時間しゃがんだ状態で園芸や農作業などもできます。また、軽いスポーツであっても関節がよく曲がらなくては、十分 に楽しむこともできないと思います。

Q 治療にかかる期間と費用はどれくらいですか

A 実際の入院は手術の2日前が一般的です。糖尿病で血糖値コントロールが必要だったりと、何らかの基礎疾患がある場合は、それよりも早めの入院となります。高齢者の場合は生活習慣病や基礎疾患がある場合も多いので、医師からきちんとした説明を受けるようにしてください。
 手術は麻酔にかかる時間、麻酔からさめる時間を抜いて、片膝の場合で約2時間です。ただし、個々の患者さんのケースにより多少異なります。
 患者さんの状態をみて、手術翌日か翌々日にはリハビリを開始します。当院ではほとんどの場合で手術翌日からリハビリ開始となります。安定した歩行ができ、階段の上り下りや一人でトイレに行けるなど、家庭内での生活ができると判断されれば、退院となります。
 多くの患者さんは5週間から6週間の入院で退院しますが、原因疾患の病状が進行していて大手術となった場合には2か月程度かかることもあります。
 そのため、薬物療法などからどの時点で手術すべきかについては、医師とよく話し合っておくことをお勧めします。ご自身で痛みや症状をがまんし続けていて、進行させてしまうと、その後の治療も大掛かりとなってしまいます。
  費用は一般に高額療養療費の制度で賄われますので現在では7万円から8万円程度です(制度の改正により変更になる場合があります)。個人の負担はそれほど 大きくはなりませんが、特別室の利用など、ご自身の都合により費用は変わってきます。また、民間保険などで補償の対象になっていれば、治療費はほとんどわ ずかな額で済むこともあります。個別の状況で金額は異なってきますので、詳しくはそれぞれの医療機関の事務・ソーシャルワーカーなどにご相談されるように してください。

Q 人工関節はどのくらい長持ちするのですか

A かつては人工関節の耐用年数は10年とか20年と言われていましたが、最近ではそれ以上長持ちすることが分かってきました。
ま た、現在の人工関節は性能が上がり、技術も向上したため、耐用年数は20年以上になっています。これにより適応年齢はかつて70歳以上といわれていました が、今は60歳前後の人であれば一生使えるといわれます。仮に耐用年数を迎え、人工関節に不具合が起きて再手術をする場合も、かつてのような大手術ではな く、部分的にパーツを取り替えるだけで簡単に済みます。
 こうした進歩の恩恵で、最近では辛い痛みは我慢せず、早めに人工関節置換術を受けましょ う、という方向に変わってきています。年齢や耐用年数にとらわれず、50歳代の方で、ものすごく悪くなっている人が手術を望まれるようになってきたり、若 年性関節リウマチの患者さんが30歳代で手術を受けたりしています。人工関節は耐用年数が伸びたことと再手術が簡単に行えるようになったことから、若い人 でもケガでグシャグシャになった関節の治療に使われています。
 痛みや変形で通常の日常生活を送れないままいるよりも、人工関節置換術を受けて生活の質を向上させることは、その人にとってどれほど有意義な人生であるかは簡単に想像かつきます。
 薬物療法やリハビリで何年も通院することは、それなりに費用がかかります。どの段階で手術を受けた方がよいのかを、かかりつけの医師と日ごろから話し合っておくと、その先の不安も解消できます。

Q  手術後の生活で注意することは何ですか

A 転倒に注意するなど、入院期間中に医師やリハビリスタッフから説明されたことは必ず守るようにしてください。特に膝関節に負担がかかるスポーツや仕事などを開始する前には、一度医師に相談して判断をしてもらうようにしてください。
  また、適切な体重を維持して肥満を避けることも膝関節に負担をかけないためには大切です。通常は退院後1ヶ月から2ヶ月は杖歩行、2ヶ月以内には車の運転 も可能なまでに回復しますが、買い物などで重たい荷物を持つことは避けてもらいます。ご家族やパートナーの方の理解や協力も大切です。
 人工関節 置換術は80歳、90歳代の方でも受けることができる安全な手術です。それまで痛みや変形による障害でがまんしてきた方でも旅行や趣味の園芸、水泳やゴル フなどを楽しむことができるようになります。中には正座が必要な趣味や和風の生活習慣に戻ることができる人もいます。それだけに、医師の指示をきちんと守 り、リハビリに取り組み、生活上の注意点なども守っていくことが大切といえます。

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